1 経産省トランスジェンダートイレ訴訟その後
令和6年11月12日、経済産業省が、トランスジェンダーの職員に対し、職場の全女性用トイレの使用を認めていたことがわかった旨の報道がなされました。これには、令和5年7月に、最高裁が、性同一性障害と診断されたトランスジェンダーの男性職員に、執務室があるフロアから2階以上離れた女性用トイレの使用しか認めていなかったことについて、人事院の措置が違法であるとの判決を言い渡していた案件が背景にあります。当該最高裁判決後、人事院が再判定を行い、省内にあるすべての女性用トイレの使用を認める運びとなったようです。
2 企業での対応はどうすればよいか
各企業において、同様の案件に直面した場合に、どのような対応をすればよいかについては、上記最高裁判決(国・人事院(経済産業省)事件=最判令5・7・11労判1297・68)の今崎幸彦裁判官の補足意見が参考になります。
その要旨は、以下のとおりです。
・同じトイレを使用する他の職員への説明や理解がないまま自由にトイレの使用を許容することを受け入れるコンセンサスが社会にあるとはいえない
・説明会や話し合いを設けた場合の消極意見や抵抗感、不安感が述べられる可能性はある
・情報提供(とくに本人がトランスジェンダーであること)も、どのような場合に、どの範囲の職員を対象に、いかなる形で、どの程度の内容を伝えるのかについては、難しい判断が求められる
・職場の組織・規模・施設の構造、取り巻く環境、職種、関係する職員の人数や人間関係、当該トランスジェンダーの執務状況はさまざまであり、一律の解決案になじむものではない
・現時点では、トランスジェンダー本人の要望・意向と他の職員の意見・反応の双方をよく聴取した上で、職場の環境維持、安全管理の観点等から最適な解決策を探っていくという以外にない
現時点においては、職場内でのトランスジェンダーの方の各種施設利用について、法令や指針等の明確な基準がありません。したがって、各企業において同種案件に直面した場合には、上記下線部のように、個別具体的な対応をしていくということになるかと思います。
ただ、その際、当該トランスジェンダーの方に、自らがトランスジェンダーであることを広く公表することを強いることのないよう、とくに留意が必要です(このようなことを強いるのは、アウティングを強いるのと同じ結果となり、パワハラの6類型の「個の侵害」に該当するおそれがあるからです。)。
Source:リーガルコネクション





