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~愛知県カスハラ条例施行 三重県も全国初の罰則付きカスハラ条例を準備中~

1 愛知県カスハラ条例
(1)愛知県カスハラ条例によるカスハラの定義
愛知県では、令和7年10月1日より、「愛知県カスタマーハラスメント防止条例」が施行されました。条例では、カスハラを、「顧客等からの就業者に対する言動であって、就業者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超 えたものであり、かつ、就業者の就業環境を害するもの」と定義しています。
これは、令和7年6月1日に公布された法律に基づくカスハラの定義(職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、当該労働者の就業環境が害されること)と類似しており、国の法制度と歩調を合わせた内容となっています。
(2)愛知県の特徴
愛知県の条例の特徴は、条例本文だけではなく、さらに、カスタマーハラスメント防止に関する指針(ガイドライン)を策定している点にあります。ガイドラインでは、条例条項の趣旨や、具体的な解釈が示され、実務の参考となる多様な具体例も記載されています。とくに、市役所の職員や学校職員を対象としたカスハラの具体例が挙げられている点にも特色が見られます。
具体例としては、次のようなケースが挙げられています。
「市役所の窓口手続に問題がないにもかかわらず、特別な優遇措置や迅速な対応をしつこく要求する」
「保護者が、学校の教育方針やカリキュラム全体を、自分の子供に合わせて、変更するよう求める」

2 三重県の動向
三重県は、令和7年10月7日の知事の定例会見で、全国初となる「罰則付き(罰金付き)」のカスハラ条例を制定する方針を明らかにしました。暴行・傷害・脅迫・業務妨害など、刑法の構成要件に該当する行為は、従来より刑事処分の対象ですが、報道によれば、条例では、「刑法や迷惑防止条例の適用が及ばない行為」にも独自に罰則(罰金)を科す仕組みを設けると言われています。施行は来年度を予定しており、カスハラ対策をより実効性あるものにするための全国的な先例となる可能性があります。

3 東海地方における広がり
すでに桑名市では、「氏名公表」を伴う独自のカスハラ条例が施行されています。このように東海地方では、自治体ごとに先進的な取り組みが進んでいます。

4 法令と条例の違い
ただ、条例は、カスハラ行為者のカスハラを止めさせる方向での規定ぶりが中心的ですが、法令は、雇用主に対し、組織内でのカスハラ対策を防止し、労働者を保護する点を主眼にしているところが異なるところです。

source:リーガルコネクション