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ハラスメント~苦情電話はカスハラ?

1 苦情電話に関するニュース
昨今、住宅地等へのクマの侵出に関するニュースが耳目を集めています。それに伴い、危害を加えたクマを駆除したことに関して、自治体に対し、抗議をするため、苦情電話が殺到し、自治体職員の業務を圧迫しているというニュースも耳にします。

2 苦情電話はカスハラか
このような苦情電話は、カスタマーハラスメントに該当するのでしょうか。民間企業に対して、一般の方が苦情電話を掛けることを例にとって検討してみます。
(1)カスハラの定義
令和7年6月11日に公布された法令によると、カスハラの定義は、「職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(「顧客等」といいます。)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されること」とされています。
(2)カスハラの行為者
ここにいう、「顧客」や「関係を有する者」の詳細は、今後指針等で明らかにされるものと思われますが、令和6年12月16日の労働政策審議会雇用環境・均等分科会(第78回)の資料(以下「労働政策審議会資料」といいます。)によれば、「顧客」には、「今後利用する可能性がある潜在的な顧客」も含むとされており、「利害関係者」は、顧客・取引先・施設利用者等の例示している者に限らず、様々な者が行為者として想定されることを意図するものであり、法令上の利害関係だけではなく、施設の近隣住民等、事実上の利害関係がある者も含むと考えられるとの言及があります。
この定義からすれば、実際に会社と取引がない顧客であっても、潜在的に顧客になる可能性がある者や近隣の者などを広く含むことになりますので、苦情電話を掛けるような関係にある者は、カスハラの行為者となり得ると考えられます。
(3)カスハラ言動
苦情電話については、令和6年12月19日に発表された東京都カスハラ条例のガイドラインが参考になります。カスハラ言動の具体例として、「就業者に対して何度も電話をして自らの要求を繰り返すこと」が「就業者への執拗な(継続的な)言動」の例に挙げられており、威力業務妨害偽計業務妨害に該当する可能性があると記述されています。
また、「長時間の居座りや電話等で就業者を拘束すること」が「就業者を拘束する行動」の例に挙げられています。
労働政策審議会資料では、何度も、あるいは長時間も電話をしなくても、1度の電話であっても、「強い精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回でも就業環境を害する場合があり得る」との記載もあります。

3 苦情電話への企業の対策
苦情電話も、回数を重ねたり長時間にわたるものであれば偽計業務妨害に該当したり、発言内容によれば、脅迫恐喝といった刑事事件に発展することもあります。
苦情電話の対応について、労働者に我慢を強いるのではなく、各社においてマニュアルを整備して、度を越えたクレーム電話に関しては、カスハラ予防としての相談窓口設置・電話録音や事後対策としての通話終了(切電)・着信拒否・電話番の交代等の具体的な方策をとりましょう。